建物を設計をする前には、建てる場所の地盤の地耐力を調査します。
地盤が悪い場合は、それなりの対応をするのですが、その方法はいくつかあります。
地盤全体の土を掘り起こし、その土に凝固剤を固めて埋め直す表層改良が1つ。
杭はよく知られていますが、それにも大きく分けて2種類あります。
支持層が浅い場合の支持杭と、支持層が深い(もしくは無い)場合の摩擦杭です。
その他にフローティング工法といって、発泡スチロールの上に建物(基礎)を建てる、建物を大地に浮かぶ船に見立てたような変わり種の工法もあります。
そう言えば、何処かの古い茶室建築は底が船のような形をしているものがあると何かで読みました。
大地震の際には地面が波のようにうねると言いますので、昔の人のそのセンスは凄いと思いますね。
少し前の話になりますが、先日上棟した木造住宅の敷地をSS調査したところ、地下水位が高い事が判明しました。
高いだけでなく、どうやら地下水脈で結構な流れがあるようなのです。
コンクリート打ち杭などでは、打設したコンクリートが流されてしまう恐れがあり、鋼管だと錆びのリスクが大きい、そんな状況から今回は木杭を採用することにしました。
昔は杭といえば木杭しかなかった訳で、旧東京駅で使われていた松杭を引き抜いたところ、あまり腐っていなかった、なんてニュースが数年前話題になったことがあります。
実は僕は、木杭の事は知っていたのですが、いつも頼んでいる地盤調査会社さんから聞いて初めて、現代にも木杭工法がある事を知ったのです。
サビるリスクは高いけれども安い鋼管杭にするか悩みましたが、文字通り基礎は一番の基礎。地盤はさらに大切です。
建物全体の施工費からすると、ほんの僅かな費用で安全を高められるのです。
そのように建主に相談し、理解して頂きました。
総工費も決まり後は着工を待つのみ、若い頃PCの現場打ち込み杭の現場を見た事があるのですが、そのように打撃するのかな?初めての工法なのでちょっと楽しみです。
杭打ち当日、天候に恵まれてまさに杭打ち日和です。
見ていたら、オーガで2/3位掘削し、そこに先の尖った木杭を圧入してゆきます。
杭の基本長さはやはり4mで、今回の杭長は6mだったので、金物で補強して打ち継いでいました。
設計段階で杭頭のレベルを決め、そのとうりに施工するのですが、「コンクリートや鋼と違って長すぎても切れるね!」なんて業者さんと話したのですが、やはり木は良いですね。
今時期が悪く、値段はそれ程安くはなかったのですが、CO2排出量も少ないし将来は引き抜いて更地に戻すこともできる木杭はなかなか良いものだと思います。
今回の現場は、隣に既存の木造道場があり、確認申請上は増築扱いでした。
実はそれが結構大変だったのです。
その話はまた次回書こうと思います。