先日起工式がありました。
工事を始める前に、工事の安全と、建物とそれに関わる人の繁栄をお祈りする神事です。
地鎮祭と同じなのですが、それの規模が大きくななったものを起工式と言うと認識しています。
神事の中で、設計者は「刈始(かりぞめ)」をします。
地面に盛られた砂に草が差してあり、設計者が鎌でその草を刈るのです。
その後、建主が「穿初(うがちぞめ)」といって鋤(すき)を入れ、最後に施工者が「土均(つちならし)」といって、鍬(くわ)を入れます。
砂の上に差さっている草を刈ります |
僕は昔は、この刈始をするとき腰を曲げて行なっていました。
ただ、想像してみてください。
185㎝の人間が50㎝くらいの高さまで地面から生えている草を刈るのに、中腰だとちょっと安定しません。
そして神事で行う場合、見ている人もいるので安定しない上にカッコ悪いのです。
悩んでいたのですが、ある日良い姿勢を発見しました。
世界的な建築家の北川原温さんがされていた姿勢です。
以前勤めていた設計事務所で、北川原先生の仕事をご一緒させていただいたことがあるのですが、その物件の起工式の刈始で先生が片膝をついていたのです。
いいスーツの膝が汚れるのも気にせず、堂々と片膝をついて刈始をする先生の姿の凛々しかったこと、今でもハッキリ思い出されます。
それ以来、僕もその姿勢を使わせていただいていますし、低い姿勢をとる必要があるときはいつでも、汚れを気にしないでしっかり膝をつけるようにしています。
日常生活でも色々ありますが、細かいことを気にして中途半端にせず、ベストな姿勢で向き合う。
刈始の姿勢も含めて、北川原先生から教わったことです。